心臓再同期療法

心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy: CRT)とは

重症心不全治療の一つとして心臓再同期療法(CRT)があります。CRTペースメーカは通常のペースメーカ機能に加え心臓の収縮タイミングの「ずれ」を補正することにより心不全の改善効果を有するペースメーカです。

心室同期障害

心臓の収縮機序と伝導障害

心臓には4つの部屋(右心房、左心房、右心室、左心室)があり、洞結節という部位からの電気信号が心房から心室に伝わることで心臓は拍動します。正常の心臓は十分な血液を全身に送り出せるようにこの電気信号が刺激伝導系を伝わって順序よく心房から心室へ伝えます。また、伝わった電気信号は右心室・左心室の心室の間や心室内(特に左心室)でも順序良く伝わる必要があります。しかしながら電気信号の伝わる刺激伝導系の障害によって電気信号が早く伝わる部分と遅く伝わる部分ができて、心室が均等な動きをしなくなります。これを心室の同期障害といいます。

心室同期障害を改善させるペースメーカ

もともとの心臓の動きが正常より悪く、この心室の同期障害が加わるとさらに悪化して心不全の状態を引き起こします。このような状態のときにペースメーカを用いて心臓に伝わる電気信号の順序を整えてポンプ機能を助ける治療法が心室再同期療法と呼ばれています。最適な薬物療法を行っても中等症から重症の心不全を有する左脚ブロック型の心電図である場合が適応になります。通常のペースメーカはリードが2本のことが多いのですが、CRTペースメーカは3本になります(写真)。全ての心不全患者様に適した治療ではありませんが、植込み患者様の約7割が心機能改善すると報告されています。植込み手術は4~5日程度の入院が必要で手術時間はリードが1本増えるため1時間30分から3時間程度です。

写真 CRTペースメーカ

両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)

CRT機能とICD機能を合わせたペースメーカとしてCRT-Dというペースメーカがあります。心室同期障害があり心室頻拍や心室細動を経験した(あるいは発症する可能性が高い)患者様が対象となります。植込み手術は4~5日程度の入院が必要で手術時間は1時間30分から3時間程度です。

写真 両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(CRT-D

文責 渡部