狭心症とは?心筋梗塞とは?

狭心症とは?心筋梗塞とは?

心筋に血液(酸素)を供給している冠動脈が動脈硬化により狭くなったり(狭窄)、つまったり(閉塞)して心筋への血流が阻害されて起こる障害の総称を虚血性心疾患と呼び、狭心症や心筋梗塞が含まれます(図1)。

図1

狭心症とは?

 動脈硬化により冠動脈が狭くなり、血液の流れが悪くなると、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養がいきわたりにくくなります。激しい運動など強いストレスが心臓にかかると、胸部、時に左腕や背中に痛み、圧迫感を生じます。発作は安静やニトログリセリンの舌下投与で数分以内におさまることが多いです。

 但し、次の症状の方は要注意です!!

  • 今までよりも軽い動きや安静時に胸痛が出現するようになった。
  • 胸痛発作の回数が増えた。
  • 持続時間が長くなった。
  • ニトロ舌下投与が効かなくなってきた。

 これらの狭心症の方は症状が不安定化している可能性があります。不安定狭心症といって、急性心筋梗塞に移行する危険性が高いので、まずはすみやかに医療機関にご連絡ください。

心筋梗塞とは?

 動脈硬化巣が破綻し血栓などで冠動脈が完全に詰まった状態になることで起こります。一度、冠動脈が詰まると心筋細胞は急速に壊死に陥ります。症状としては、突然の激しい胸の痛み、呼吸困難、冷汗、嘔気、嘔吐などがあります。急性心筋梗塞に対する最も重要な治療は、閉塞した冠動脈を心臓カテーテルなどで一刻も早く再開通させることです。このような症状が見られたら直ちに救急車を要請してください。

危険因子

 糖尿病・脂質異常症・高血圧症・喫煙・高尿酸血症・慢性腎臓病・肥満等の生活習慣病をお持ちの方ほど、起こりやすい病気です。動脈硬化は全身同時に進行するため、下肢閉塞性動脈硬化症や脳梗塞などの全身の血管病にも目を向けて、治療したり予防したりする必要があります。

検査

 糖尿病・脂質異常症・高血圧症・喫煙・高尿酸血症・慢性腎臓病・肥満等の生活習慣病をお持ちの方ほど、起こりやすい病気です。動脈硬化は全身同時に進行するため、下肢閉塞性動脈硬化症や脳梗塞などの全身の血管病にも目を向けて、治療したり予防したりする必要があります。

1. 運動負荷心電図

 運動することにより、心臓に負荷をかけながら心臓の筋肉の変化を心電図として観察・記録します。安静時にははっきりとしない症状や心電図変化を、意図的に誘発することにより心臓の異常の有無を調べます。

2. 負荷心筋血流シンチグラフィ

 放射性同位元素を注射し、心臓の筋肉(心筋)に取り込まれた放射性同位元素から放出される放射線を撮影することにより、冠動脈から心筋への血液の供給が障害されていないかどうかを知る検査です。心臓に負担をかけた状態(負荷)と通常の状態(安静)の二回検査を行い、それらの画像の差を見て血流の供給の程度を評価します。

3. 冠動脈CT

 CT検査では点滴を確保した上で造影剤を注入し、心臓の血管を画像化する検査です。動脈の詳細な観察可能です。ただし狭窄が見つかった場合、血流低下の有無を評価するため、多くの場合、カテーテル検査等などの追加の検査が必要でした。また、造影剤を使用しますので、この検査はヨードおよびヨード造影剤アレルギーや慢性腎不全の患者さんにはできません。

4. FFRCT

 冠動脈CTの結果をコンピューターで解析し、血流低下の有無を見る検査です。追加の検査を受ける必要なく、治療の必要性をより正確に評価することが可能となりました(図2)。

図2

5. 冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)

 1~4までの検査は外来でできますが、冠動脈造影検査は入院が必要になります。手首や肘、ふとももの付け根の動脈を局所麻酔し、カテーテルを挿入し、冠動脈の入り口までカテーテルを近づけて造影を行います。より詳細な血管の情報を得る事ができ、治療方針の決定に役立ちます。急性心筋梗塞の場合、一刻も早く心臓カテーテル検査で閉塞部位を同定し、閉塞した冠動脈を再び開通させる「再灌流療法」を、迅速かつ確実に達成することが重要となります。

治療

1. 冠動脈危険因子の是正

 虚血性心疾患は高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙習慣・運動不足などが積み重なることで発症すると考えられています。いくら狭心症や心筋梗塞病変を治療しても、その原因となる危険因子を治療しないと、病気が再発したり新たに動脈硬化が進んでしまいますので意味がありません。再発を予防するためには食事や運動などの生活習慣を整え、喫煙者は禁煙を目指すことが大切です。

2. 内服治療

 薬物治療は、治療の基本となるもので大切です。血管の狭窄などが治ることはありませんが、症状を軽減させる・動脈硬化の進展を抑えるなど、目的に応じて処方されます。特に強い副作用が無い限り、通常は抗血小板薬・脂質降下薬・β遮断薬など何種類かの薬を服用します。

3. 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)

 心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)と同様の手順でカテーテルを用いて狭窄病変や閉塞病変を治療する方法です(図3)。

図3

 手首や肘、ふとももの付け根の動脈から冠動脈までカテーテルを挿入し、バルーンカテーテルを使って治療します。バルーンカテーテルは先端に風船がついており、病変で風船を膨らますことによって狭窄病変を拡張させます。風船治療で効果不十分が予想される場合は、薬物溶出性ステント(金網の表面に再狭窄を予防する効果のある薬剤をコーティングしたものです)やロータブレーター(先端に小さなダイヤモンドの粒を装着した丸い金属を、非常に高速に回転させることで、石灰化など固い病変を削ることができます)、エキシマレーザー(レーザーで血栓などを蒸散させることが可能です)など最先端技術を取り入れた治療を行います。

 特に心筋梗塞の場合、閉塞した冠動脈をカテーテル治療で一刻も早く再開通させることが重要です。当院では24時間365日、心臓専門の医師が常駐し迅速に対応できる体制をとっています。

4. 冠動脈バイパス術(CABG)

 冠動脈バイパス術とは、開胸して心臓以外の動脈(または静脈)血管を移植(バイパス)して冠動脈血流を確保して心筋を保護する方法です。

 狭窄病変が数多くにわたってある場合(多枝病変)やPCIが難しいと予想される病変(冠動脈石灰化が顕著で治療困難な病変など)、冠動脈再狭窄を繰り返す病変の場合には、外科的治療が適していることがあります。心臓内科、心臓血管外科を含めたハートチームで個々の症例を協議し、最適な治療を提案しています。

文責 河合