心臓内科の診療・活動内容

 心臓内科では常勤10名と後期研修医2名、専攻医6名の合計18名の医師が臨床・研究に従事しています。心臓内科の病床数はCCUに6床、一般病棟に46床、計52床あります。ただし、この病床数は流動的であり、急患が多い時期は50床以上になることもしばしばあります(2018年病床利用率110%)。

当科ではCCU当直以外にスタッフ3名、初期研修医1名、その他コメディカル数名(臨床工学技師・看護師など)とあわせて日中と変わりない体制で休日夜間の緊急カテーテル検査を行えるようにしています。急性冠症候群・急性心不全・致死性不整脈などの急性心疾患をこの24時間体制で対応するだけではなく、重症心不全や重症不整脈などの難治性心疾患に対しても積極的にその病態を解明し、最適な治療を行うべく高度・先進医療機器を駆使して、常に最先端の診療を目指しております。さらにそれらを元にした臨床研究を積極的に推進し、毎年国内はもとより海外の学会に情報発信しております。

 心臓内科の2018年の年間入院患者数は2924名であり、そのうち緊急入院患者数は597名でした(平均在院日数は6.8日)。チームは心血管インターベンション、心不全、不整脈の3つのチームに大きく分かれており、以下に各チームの実績をご紹介します。

心血管インターベンション

 2018年には2773例の心臓カテーテル検査、546例のPCI(成功率は98%、うち緊急症例は136例)を行っています。急性冠症候群は151例(うち急性心筋梗塞104例)で、上述のごとくオンコール体制をとることで、当科ではDoor to Balloon Timeを平均55分で達成できています。2016年よりエキシマレーザー(ELCA)を導入し、2018年は38例に施行しました。慢性完全閉塞病変に対しては過去10年間に291例施行し、その成功率は88%と比較的高く、手技の技量は全国レベルに引けをとらないと自負しております。末梢血管疾患に対しては186例インターベンション(EVT)を施行しています。経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)に関しては過去に16例に施行しております。

2014年10月には経皮的大動脈弁置換術(TAVI)を導入し(関西で6施設目)、2018年までに189例のTAVIを施行し(過去3年間で154例)、2019年にはTAVI専門施設に認定され、TAV in SAV(機能不全に陥った外科生体弁へのTAVI)も行えるようになりました。さらに2019年1月より手術リスクの高い重症僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraClipも開始しております。

心不全

 慢性心不全に対するβブロッカー療法は現在としては確立された治療法であります。この治療法の効果は約40年前に世界では初めて報告されたのですが、当科ではその数年後より、日本国内では初めて拡張型心筋症にβブロッカー療法の導入を行いました。2018年の急性心不全入院数は330例で、その59%が左室駆出率低下型心不全(HFrEF)、41%が保持型心不全患者(HFpEF)でした。心不全症例に対しては、心臓超音波、心臓MRIや核医学検査などの画像検査、心臓カテーテル検査並びに心筋生検などの検査を駆使して、可能な限り的確な診断を下して最適な治療を選択しております。

 当科では1995年10月より心不全専門外来を開設(これもその当時日本で初めて)し、多数の介入臨床試験(その当時の病院名からOsaka Prefectural Trial:OPTと命名)を行っています。慢性心不全におけるβブロッカー療法が確立されていなかった1995年頃から、カルベジロールなどの薬剤効果を検証する前向き試験を行いました。これらの前向き試験では慢性心不全患者予後調査も同時に施行しており、慢性心不全患者の予後予測に関して多数、論文として報告しています。さらに2011年より急性心不全患者の前向き観察研究(Osaka Prefectural Acute heart failure Registry; OPAR)を行い、種々の結果を学会発表・論文で世界に発信しております。

不整脈

 近年、不整脈入院患者数、カテーテルアブレーション件数は著明に増加しています。2018年はアブレーションを611例に施行しました。最近ではアブレーションのほとんどの対象疾患は心房細動(517例: 全体の85%)であります。2017年には超高解度3次元マッピングシステム(Rhythima)を導入しており(西日本で3番目)、今後益々難治性不整脈症例に対するアブレーション実施数が増えていくと思われます。徐脈性不整脈に対しては人工ペースメーカ植え込み術153例(このうちHis束ペーシングは27例、Leadlessは18例)、頻脈性致死性不整脈に対してICD植え込み術31例(このうち皮下植え込み型除細動器 7例)、心不全に対してCRT12例(CRT-Dは9例)施行しています。さらにエキシマレーザーを用いたリード抜去術を2017年より開始し、7例施行しております。