下肢救済外来

ご挨拶

 高齢化社会が進むにつれ、生活習慣病の一つである糖尿病、および動脈硬化によって引き起こされる末梢動脈疾患が増加し、これに伴う潰瘍などの下肢皮膚病変が問題となっています。下肢皮膚病変が重症化すると、歩行困難などを引き起こし、患者のADL、QOLを低下させるだけでなく、下肢切断のみならず生命予後そのものに重大な悪影響を及ぼすことが知られています。

 我が国で約700万人と推定される末梢動脈疾患では、虚血の進行と共に間欠性跛行から安静時疼痛や潰瘍形成などの症状が進行します。特に皮膚病変を伴う重症下肢虚血患者では疼痛や全身感染治療のため約30%が下肢切断に至り、10年生存率は約20%に低下します。予備軍も含め約2000万人と推計される糖尿病患者では15~25%で難治性下肢潰瘍が形成され、3~20%で下肢切断に至り、下肢切断患者の5年生存率は約40~60%に低下します。このように下肢皮膚病変を呈する患者は下肢切断となる可能性が高く、予後も大変不良ですが、下肢の虚血や糖尿病を早期に発見し、定期的に診察とケアをすることで、下肢切断の可能性を可及的に減少させることができます。そのためには皮膚病変の原因検索とそれに対する血行再建などの内科的外科的アプローチ、創部局所に対するデブリドマンなどの処置、創傷部のケア、および感染症のコントロールなどが必要となります。

 単一診療科で治療を完結させることはしばしば困難とされ、集学的治療のための連携体制を構築することが急務です。この度、当センターでは、心臓内科、心臓血管外科、皮膚科、形成外科、リハビリテーション科が中心となり、下肢皮膚病変に対して早期に適切な検査、治療を患者さんに提供できるよう、下肢救済チームを結成いたしました。総合病院の強みを生かし、各診療科の垣根を越えて診療にあたることで様々な基礎疾患にも迅速に対応しております。具体的には、糖尿病を有する患者様には糖尿病内科に血糖コントロールを、また専属の看護師がフットケアに関しての指導も行っていきます。血液透析が必要な患者様は日々の透析管理も重要であり当院腎臓内科医師と協力して治療に当たり、必要に応じLDLアフェレーシスであるレオカーナも積極的に導入しております。 さらに疼痛管理のため2024年度からは脊髄刺激療法を開始いたしました。脳外科医師とともに薬剤での疼痛管理に加えて脊髄刺激により疼痛緩和を行っております。(詳細は当院脳外科ホームページを参照下さい)。また、リハビリ科、栄養士とも相談し運動、食事療法にも積極的に取り組んでおります。下肢切断回避のみならず、患者様のADLとQOLを維持するため定期的なケアと治療は大変重要です。このチームが下肢救済を手助けできるよう、努力して行きたいと思います。

中村 淳

下肢救済責任者:心臓内科 中村 淳 外来日:毎週水曜日 12時〜15時まで

(緊急症例はご連絡の上当日受診可能です)

予約紹介制

担当医:心臓内科 中村淳 河合努

     心臓血管外科 金啓和 横山淳也

     皮膚科 益田知可子

     形成外科 新村啓介

対象の患者様

  • ・下肢冷感や色調不良を認めており、安静時にも痛みがある方
  • ・下肢に潰瘍/壊疽が生じている方

 以上のような患者さんが対象になりますのでかかりつけの先生から紹介状を頂いて予約ください。また、突然に下肢の色調が悪くなったり、感覚が消失したりした際には当日緊急で対応をさせて頂きます。

受診の流れ

  • 1. 受診前の検査として血液検査、四肢同時血圧測定(ABI検査)、胸部レントゲンなどを受けて頂きます。これらの結果をもとに実際に診察を行います。
  • 2. 心臓外来にて問診や下肢の触診などの診察。血流の低下が示唆される場合には追加検査で下肢動脈エコー検査や造影CT検査を受けて頂きます。
  • 3. 次に皮膚科外来にて、皮膚科医師と共に創部の診察をいたします。(深さ、大きさ、感染の状態など)その際には当院の皮膚・排泄ケア認定看護師も一緒に処置を行い、洗浄の方法や包帯の巻き方など詳しく説明して頂きます。
  • 4. デブリドマン(創部の壊死部分の除去など)が必要な場合はそのまま処置を行うこともあります。その場合は局所麻酔や神経ブロックと呼ばれる麻酔を行い、処置をします。
  • 5. 血流障害を認めており、カテーテル治療のため入院が必要な方や潰瘍が重度な患者様は入院予約を取っていただきます。(感染症が重度の場合は緊急入院になることもあります)