経皮的左心耳閉鎖術(P-LAAC)

1,経皮的左心耳閉鎖術(P-LAAC)とは?

2,実際の経皮的左心耳閉鎖術の流れについて

3,どんな患者さんで経皮的左心耳閉鎖術をしたほうがいい?

4,この治療のメリットとデメリットとは?

5,当院における経皮的左心耳閉鎖術の実際

 

1,経皮的左心耳閉鎖術(P-LAAC)とは?

心臓には左心房の一部に「左心耳(さしんじ)」という小さな袋状の部分があります。心房細動という不整脈があると、この左心耳の中で血栓(血のかたまり)ができやすくなり、それが脳へ流れると 脳梗塞 を引き起こすことがあります。

通常は「抗凝固薬(血液をサラサラにする薬:エリキュース、リクシアナ、プラザキサ、イグザレルト、ワーファリンなど)」で予防しますが、「出血しやすい」、「薬を長く続けられない」といった理由で、薬だけでは対応が難しい方もいます。そのような場合に検討されるのが 経皮的左心耳閉鎖術 です。経皮的左心耳閉鎖術では左心耳を閉塞栓により永久に閉鎖することで抗凝固薬を長期間服用するのと同程度に脳梗塞のリスクを低下させ、出血のリスクを低下させることが報告されています。

2, 実際の経皮的左心耳閉鎖術の流れについて

経皮的左心耳閉鎖術は、胸を切らずに行う「カテーテル治療」です。全身麻酔下で足の付け根の血管から細い管(カテーテル)を入れて心臓まで進め、左心耳の入り口に蓋をするように医療器具(閉塞栓)を留置します。この閉塞栓をWATCHMAN(ウォッチマン)TMといいます。ウォッチマンは500円玉ほどの大きさをした傘や栓のような形をした小さなデバイスで、左心耳を永久に閉鎖します。 経皮的左心耳閉鎖術では一般的に手術の翌日から歩行が可能です。

●実際のWATCHMAN(ウォッチマン)TMを用いた経皮的左心耳閉鎖術の流れ

•足の付け根の血管から細い管(カテーテル)を入れ、心臓の左心房まで進める。

画像提供 ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社

•カテーテルを左心耳の入り口まで進める。

画像提供 ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社

•WATCHMANを左心耳の中で展開し、左心耳が閉鎖されていることを確認して留置する。

画像提供 ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社

•入り口をふさぐことで、左心耳の中で血栓ができても血流に乗って外へ出るのを防ぐことができます。

より詳しい経皮的左心耳閉鎖術の流れは以下の動画をごらんください。

3,どんな患者さんで経皮的左心耳閉鎖術をしたほうがいい?

心房細動という不整脈があり、長く抗凝固薬(エリキュース、リクシアナ、プラザキサ、イグザレルト、ワルファリンなど)を飲む必要がある方で、「出血のリスクが高い方」、「転倒に伴うけがや病気の治療を複数回した方」、「他の病気で血液をサラサラにする薬を1年以上飲まなければいけない方」、「実際に出血がおこった方」が経皮的左心耳閉鎖術のメリットがある方と言われています。

4, この治療のメリットとデメリットとは?

経皮的左心耳閉鎖術には以下のようなメリット、およびデメリットがあると考えられます。

メリット

  • 1.脳梗塞のリスクを下げられる(抗凝固薬と同等の塞栓症予防効果が示されています)。
  • 2.抗凝固薬を減らせる、または中止できる可能性があります。このことにより出血のリスクが大きく低下します。
  • 3.胸を切らないため身体への負担が少ないです。

デメリット

  • 1.すでに心臓内に血栓がある方や左心耳の形状などにより経皮的左心耳閉鎖術を行ってはいけない患者さんもおられます。
  • 2.手技に伴う合併症(出血、心臓への影響など)の可能性があります。
  • 3.治療後に閉塞栓に血栓が付着することもあります。
  • 4.術後に長期間、血液をサラサラにする薬が必要になる場合もあります。

5,当院における経皮的左心耳閉鎖術の実際

当院では2021年より経皮的左心耳閉鎖術を導入しており、2025年12月31日までに合計51名の患者様に対して治療を行っております。ほぼすべての患者様が手術の翌日から歩行を開始でき、3泊4日でご退院なさっております。詳しい診療実績についてはこちらでご確認ください。

経皮的左心耳閉鎖術は、心房細動があり、抗凝固薬の継続が難しい方に対する新しい治療選択肢です。抗凝固薬を服用されており、出血にお困りの方がおられましたら担当医までご相談ください。

文責 近藤